敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【孟母三遷】VOL.2


● 孟子の墓(左)と孟母三遷祠

 やがて孟子は、本を読む真似をしたり、字を書いて遊ぶようになり、礼儀作法の真似をするようになったそうです。三度の引っ越しの結果として、最善の住環境を整えることで子供にいい影響を与えることの喩えとして「孟母三遷」という故事が生まれました。鄒城市には現在、孟母三遷祠が建てられています。
 孟母が一人の女性として偉大と言われる理由は、五味、すなわち酸・苦・甘・辛・鹹(さん・く・かん・しん・かん)に精通したうえ、酒にも長じ、舅姑を養い、衣服を縫ったばかりか、「三従の道」をこなしたからだと言われています。
 三従の道とは、
  稚き時は父母に従い、
  嫁いる時は夫に従い、
  老いては子に従うべし
で、わが国には江戸時代中期に女性教育に用いられた教訓書「女大学」で広められました。
 しかし、後に「古い女子教育の考え方」の比喩としても用いられ、福沢諭吉は本書の意見を否定して「新女大学」を著しました。
 それにしても、数十年間倦むことなく我が子の誕生から成長過程まで気を配り、深く慎しみ、志を精励し、実直さと品格を養わせ、勉学・礼を習得するまで諄々と教え諭した孟母の逸話は、現代に生きる母親にも多くのヒントを与えてくれることでしょう。