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【向銭走】VOL.1
● 毛沢東とケ小平
春秋時代・斉の政治家・管仲が著した『管子』牧民に、「衣食足則知榮辱(衣食足りて栄辱を知る)」という名言があります。日本では「衣食足りて礼節を知る」で知られていますが、最近の中国人は「利己的」、「打算的」な人が増えたと揶揄されています。
高級外車に乗り、海外旅行をし、ブランド品を買い漁り、ご馳走を食べ、それなのにマナー問題は突出して指摘されます。物質的に不自由がなくなったのに、礼節どころか「無礼の国」になったと言う人すらいます。
中国国家観光局の発表によると、昨年、海外旅行をした中国人は延べ7,000万人(前年度比22%増)と、空前の旅行ブー
ムですが、中国人旅行者の素養が疑われるような傍若無人ぶりが多発しています。
市場経済化が進む現代中国では、経済格差は開く一方で、一部の地域、一部の人だけが豊かになりました。一部の豊かな人は天狗になり、一部の余裕のない人は公共心、道徳心が欠如しています。
いずれにしても、国を挙げて成金を目指す様は、かつて毛沢東時代のスローガン「向前走」から、同じ発音の「向銭走」へと変貌してしまいました。このような風潮を「拝金主義」と非難する人もいます。
しかし、成金たちがさらに儲けようと経済活動に勤しめば、付加価値も生まれ、雇用も増え、結果的に国が豊かになるという、ケ小平が主張した市場経済化に繋がったはずです。
中国国民が、本当の意味で「幸福感」や「満足感」のある充実した生活や人生を送れる時代になるまでにはまだまだ時間が必要でしょう。
次号では、司馬遷の教えを通じ、貨殖の正道についてお話ししたいと思います。
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