敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【向銭走】VOL.2


● 史記列伝

 司馬遷が著した『史記』巻129「貨殖列伝」には8人の素封家(そほうか)が登場します。
「素」は空しい、「封」は封土ですので、領地や官位を持たないが王侯にも比すべき財産家、つまり大金持ちを指します。 その8人とは、
 利殖の祖「白圭(はっけい)」、
 牧畜業で財をなした「★氏(らし)」、
 水銀鉱山で財をなした「清女」、
 製鉄業で財をなした「卓氏」、
 鍛冶屋から金融で財をなした「☆氏(へいし)」、
 奴婢を使って魚塩商売で財をなした「?間(ちょうかん)」、
 農業牧畜で財をなした「任氏」、
 呉楚七国の乱で諸侯に貸しつけた軍費を元に財をなした「無塩氏」
です。
 経済統制と専制政治が強制された時代に、真っ向から対決した司馬遷の強烈な批判と自由経済論でもあります。彼らは総じて、自分の才覚と自由な経済活動によって財をなし、さらに徹底した節約で裕福になった訳です。
 刻苦勉励こそ繁栄の原点であり、古今変らぬ貨殖の正道と言えるでしょう。経済活動が利己的な利益追求となり、森林破壊、大気汚染、水質汚染・海洋汚染、土壌・地下水汚染、生態系破壊など、自然環境さえ破壊している現在、次世代の人間がその代償を受けることのないよう、世界レベルで考えないといけないと強く思います。


【作字】
 ★…にん編+「果」
 ☆…丙+こざと