敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【三十六計】VOL.2


● 1972年、山東省臨沂市の銀雀山から出土した『竹簡孫子』(山東博物館所蔵)

 古代の武将・軍事思想家で兵法書『孫子』の作者である孫武(紀元前535年〜没年不詳)、戦国時代の斉の軍人で思想家である孫★(紀元前4世紀頃)、秦末から前漢初期にかけての武将である韓信(? 〜紀元前196年)、唐代に太宗に仕えた軍人で政治家の李靖(571年〜649年)など、戦略、戦術、情報など幅広い領域で業績を残しました。
 孫武は実際に存在した武将かどうか、古くから中国史学者の間では論争がありました。しかし、1972年、山東省臨沂県銀雀山漢墓から孫★が著した兵法書『孫★兵法』の竹簡が発見され、その存在が立証されましたが、それでも事跡に関する史実性について論争が継続しています。
 彼らは、総じて『易』の理念に精通し、巧みに軍事に用いて成功を収めました。「禍を転じて福となす」という思想は「易」の王道ですが、『三十六計』は、各計の解題はその多くが『易経』の言葉で構成されています。
 「易」の核心は、「陽と陰」、「剛と柔」、「乾と坤」という具合に、それぞれの対立を成す陰陽二元論であり、あらゆる事物は孤立の存在ではなく、必ず対をなし、それぞれが対立することによって変化するとしています。
 そして陰は陽に変じ、陽は陰に変ずるように、両者は固定的・絶対的なものではなく、つねに相互に転化し、相互作用することで新たなものを生み出し、発展させるとしています。これが『易』における弁証法的認識としています。
 物事が天運に左右されるのではなく、その思想が風化せず今に伝え残った最古の兵法書には、現在を生き抜くための英知が凝縮されていて、いろんなジャンルの参考に指針にされています

★(ぴん)…月編に「賓」