【骨董蒐集心得】VOL.1
● 幸田露伴
新年おめでとうございます。2014開幕は僕の事業のひとつでもある「骨董」について話したいと思います。
日本では、古来より文人が実用や愛玩のために文房諸具を集めて座右に置くという風習がありますが、その歴史は古く、室町時代にまで遡ると言われています。江戸中期頃となると、それら蒐集品は骨董と呼ばれるようになりました。そして明治時代、伝世の美術品全般を骨董と総称するようになり、それらを商いとする人を古道具屋、または骨董屋とよぶようになりました。
さて、この「骨董」という単語には全く字義はなく、中国で作られた単語と言われています。かつて幸田露伴は、
骨董といふのは元来支那の田舎言葉で、字はたゞ
其音を表はしてゐるのみであるから、骨の字にも
董の字にもかゝはつた義が有るのでは無い。
と、断じています。
昔は「汨董」や「古董」と書かれるコトもあったようです。現代中国では「古董」が一般的ですが、骨董は音訳が定説とするのが正しいようです。骨董が「古銅」の音訳だとする説もあり、それが後に金石、玉器、書畫に広がったのだとされています。
ただ、骨董と一口で言っても、周鼎漢彝玉器といった珍貴文物の類いから、書画法帖、文房四寶、陶磁器、そして竹木雑器まで、あらゆる古い物は総じて骨董品ですし、それぞれのジャンルに尽きせぬ蒐集癖を持った人が存在します。高価な物は博物館、記念館、美術館といった公共施設、そして骨董屋、鑑定家、目ききの人に至るまで、骨董好きが蒐集したお宝が世界各国津々浦々まで存在します。非常に興味深く、面白く、意義ある事と言えるでしょう。
しかし、埋葬品、盗掘品、出土品などは、古人や死人の手垢が附いた物として忌み嫌われたりしますが、そんなことを言ってしまえば、大博物館は盗賊の戦利品コレクションになってしまい、全く野暮な話となります。骨董品が珍重され、蒐集による保護が行われるお陰で、歴史的同時代資料が管理され、そのお陰で歴史・文明が立証されるのです。そのような意義を知らず、食欲色欲ばかり追いかける芸術家は、本当の意味での藝術感を味わうことの出来ない不幸な人と言わざるを得ません。
次号では中国を代表する蒐集と研究に人生を費やした陳介祺をご紹介し、骨董好きの心得について改めてお話します。
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