敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【アンカーベイビー(anchor baby)】VOL.1


●アメリカにある月子中心

 中国では、出産後の約一カ月間を「坐月子」といい、母体の休養と回復、そして栄養を採るための非常に大切な期間とされています。一昔前まで坐月子はといえば、実家の母や義母の一大任務とされていましたが、最近は親世代も働いていることもあって、自宅で十分な坐月子は難しいようです。そこで近年、富裕層の妊婦たちが越境出産の主要目的地として香港を選び、子供に香港国籍を持たせようとするケースが増えました。
 しかし、その数が増えるにしたがって地元・香港人の出産に悪影響が出始めたため、医療機関のベッド数を地元の妊婦のために確保するなど、中国本土からの妊婦に対する大幅な規制を講じました。そこで、事業に成功した企業家や富裕層の配偶者、汚職官僚の愛人たちは、新たに出産のために渡米し、今度は新生児に米国籍を取得させようとするケースが急増しています。
 統計によると、渡米出産は毎年5〜6,000人に上るとみられ、内訳は40パーセントが上海、30パーセントが北京、残りが広州その他の地域からの渡米だそうです。
 ニューヨークやロサンゼルスといった大都会には「月子中心」という中国人の産後の受け入れ施設が増えています。渡米出産の費用は最低でも一〇万元が相場で、帝王切開や不測の事態による手術費用などは別途、必要になりますが、それでも富裕層はさらに数万元負担して、より快適な出産環境を望んだり、さらに少なくとも10,000元は割高といわれるニューヨークでの出産を希望するそうです。
 次号では、越境出産を目論む理由と、今後の越境出産の行方についてお話したいと思います。