敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【アンカーベイビー(anchor baby)】VOL.2


●抗議活動する現地住人

 妊婦たちの滞在先「月子中心」の宣伝文句は「赤ちゃんのスタートラインを米国に」という煽動的なキャッチコッピーで、新たなビジネス展開を目論む同業者が増えています。
 米国籍を足がかりに家族や親族を呼び寄せる目的で生まれてきた赤ちゃんは「アンカーベイビー(anchor baby)」と呼ばれています。この呼称は、「まずは赤ちゃんが米国にいかりを下ろし、家族を引き寄せる」という意味です。アンカーベイビーは、小・中・高13年間の義務教育を受ける権利を持ち、将来の海外留学、奨学金、また就職にも有利になりますし、さらに21歳になれば両親の移民申請もできます。米国では米国内で生まれた子どもは親の国籍や在留資格を問わず米国市民として一律に扱われ、しかも満18歳になれば、米国籍か両親の国籍か、本人の自由意志で選択できるのです。これは合衆国憲法修正第14条の「米国で出生したすべての者に米国の市民権を与える」とする「出生地主義」条項で、南北戦争直後の1868年、黒人奴隷らの権利を保護するために合衆国憲法に追加された法律ですから、「越境出産は真の目的を汚す行為」として批判の対象となっています。
 中国からの産婦を受け入れる月子中心には、住宅地に建設禁止、米国籍の看護師の配置などの厳しい規定があるため、単なる宿泊施設として登録しただけの「違法月子中心」も多く、周辺住民の反対運動や立ち退きを迫られる抗議活動によって、市自治体から閉鎖命令が出た月子中心もあるようです。米国には妊婦の入国規制はありませんが、ビザの目的が「観光や親族訪問」で、実際には出産目的と判断されれば、当然、入国拒否されますし、実際に空港で入国拒否された中国人妊婦もいるため、今後は米国への越境出産は困難になると見られています。