敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【紅一點】VOL.2


●石榴花

 その後、北宋時代となり、時の皇帝・徽宗は、皇帝でありながら書画に精通し、蒐集と保護に努めました。中国史上で最も芸術に理解のある皇帝とも言われています。徽宗は優秀な宮廷画家を発掘するため、志願者に「万緑叢中紅一点」をテーマに絵を描かせたところ、皇帝の想像を絶する作品を描いた画家が二人いたそうです。一人は、柳の木に囲まれた楼閣の欄干に、赤い口紅を塗ったきれいな少女を柳の緑と口紅の赤を色鮮やかで鮮明なコントラストで描きました。もう一人は、遥か彼方の海から昇る赤い朝陽を描きました。どちらもユニークな構想で皇帝の心を奪う絵を描きましたが、これがたくさんあるなかから一つだけ異彩を放つもの、つまり「紅一点」という単語として誕生したとされています。赤い花が女性を連想させることから、さらに転じて、男性の中に混じる唯一の女性という意味になったようです。
 中国語では、王安石の詩そのもの「濃堺ン枝紅一點」を、ことわざと同じように使います。意味としては、「たくさんあるものの中で、人々の注意を引く最も目立つ点」、あるいは「多くの男性に混じったたった一人の女性」という二つの意味と捉えますが、日本と同じ後者の意味で使うこともあります。
 七福神の紅一点といえば「弁才天(弁財天)」、女神さまです。開運、商売繁盛、弁舌、芸術、財神として信仰されています。書道家である本誌の読者のみなさんは決して粗末にはできない神様と言えるでしょう。