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【改正「高齢者権益保障法」】VOL.2


●恐怖の帰省ラッシュ

  同法第18条では、
 「家族の成員は、高齢者の精神的需要に関心を払い、高齢者を軽視したり、粗末に扱ったりしてはならない。高齢者と別々に暮らしている場合は、頻繁に実家に帰り、親を顧みなければならない。雇用者側は、国家関連規定に基づき、離れて暮らす被扶養者を抱える社員の帰省休暇を保障しなければならない」
と定めています。そして初の改正法適用として、江蘇省無錫市に住む七七歳の女性が、娘夫婦に対して「一人暮らしの自分の面倒と、家賃と医療費の負担を求めた」裁判で、その訴えが全面的に認められました。判決文で、
  「親子双方のいたわりが肝要であるが、少なくとも2カ月に1度は帰省が必要」
との判断を示しました。しかし、地方からの出稼ぎ労働者が帰省に要する費用が増加し、結局は「帰省難」や「帰省貧乏」に直結するという問題、そして両親の物質的生活を満たすだけの格差是正が解決されていません。
 この改正法施行は、急速な高齢化に社会制度が対応しきれていない現状が顕著に表れたものですが、「法律で親孝行強いる」こと、「会社に帰省休暇を義務づける方が先決」などの反対も多いようです。中国の高齢化の速度は現代化のそれを遥かに上回っていますから、「豊かになる前に老いる」、「老後に備えるまでに老いる」という現象が深刻になっています。
 中国社会の日々すたれつつある道徳概念、若者の高齢者重視を促す一つの手段として法的基準が設けられましたが、はたしてこれで中国の社会文明が前進したのかについては甚だ疑問が残ります。