敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【中国古典】VOL.1

 書道家・篆刻家が作品の題材を選ぶ時、中国古典にその題材を求めることは多いと思います。書道展を観に行きますと、漢詩の場合「○○詩 ○○書」、調和対の場合読み下し文が多いので「○○詩を ○○かく」といった具合に落款に書されているのを見かけます。
  なかでも多いのが『論語』『荘子』『孟子』『十八史略』『菜根譚』などで、これらは古くから多くの人に愛読されてきた中国古典です。先人はこれらを学習することで基本的な素養を身につけたことは勿論ですが、生きてゆく上での指南書として接してきたことも事実でしょう。
  少なくとも明治時代まで続いたとされる中国古典の教育は、思想の『論語』、歴史の『十八史略』、文学の『唐詩選』、人生指南の『菜根譚』がその代表と言われています。
  これらはいわば社会人必須の教養として、日中両国でも昔から人間形成のために広く読まれてきました。
 しかしながら最近の日本人は中国古典の素養がなくなったと言われています。50歳代でガクンと減り、40歳代になると知らない人の方が多く、20歳代になるともうほとんどの人が知らないというのが実状のようです。
  これには日本の教育システムの偏重も大きな原因があると思うのですが、「そんなことも知らないの?」といった大人が増えていることは嘆かわしい事実です。
 さて中国古典は大きく「経世済民」と「応対辞令」の2つを重要な柱としています。「経世済民」とは、戦国乱世の天下をどのように治めるかなど、政治に関わる指針が説かれているものです。『孫子』の兵法にある、「智」「勇」「信」「厳」「仁」をわきまえた『三国志』曹操は非常に高い戦績を残しました。
  同じく天下を取った徳川家康も「撤退の天才」だったと言われています。ちなみに武田信玄の有名な「風林火山」の四字も、『孫子』の兵法から採った教えです。