敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【年画】VOL.1

 
●多福多壽多子図(左)と福到図(右)

 中国の伝統的な民間絵画芸術の一つに年画があります。家の門扉や室内の壁面などに貼られたあの「派手な絵」のことです。年画の多くは大量製作するために水印版画の手法を採用されていますが、その目的は慶祝・厄除けなどの祈願にあります。多くの中国の人々は毎年年末になると翌年の年画を買い求めに街に繰り出します。
 そして古い年画をはがし、家内安全や商売繁盛、五穀豊穣・試験合格など、いろいろな願い事を新しい年画に託すわけです。
  その絵柄・図像には神仙や吉祥、来福、生活、故事、風景、人物などさまざまあり、また色彩もおおむね赤・黄・青・緑・紫・黒など六種の色彩による独特の色使いによって描かれています。
  これらはその地方によって傾向が異なり、北方は原色を多用したコントラストの強いものが多いのに対して、南方ではコントラストを抑えた優雅な感じがあります。地方に行くとさらに色合いや伝統による色々な年画を見ることができます。
  聞くところによると、13億人もの国民を有する中国の、その殆どの家庭が毎年年画を張り替えるわけですから、その種類や数は想像もつきませんね。ある書物で調べましたら、種類だけで5000種類以上、毎年の消費量が10億枚近いとありました。
 さて版画の起源は、古くは周代の青銅器の紋様に求める説もあるほど古いものですが、現存する最古の年画となりますと金代(1115〜1234)の「四美図」や「義勇武安王位」まで遡ることになります。その後明代に木版多色刷りの技術が完成し、さらに清代になって西欧絵画の影響などを受けて年画の技術は最高水準に達したと言われています。この最高の技術が日本の浮世絵版画の礎になったとされています。