敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【体育的秋天 芸術的秋天】VOL.2


●上海東北部の魯迅公園内にある魯迅像。中国が誇る偉大な文学者です。

 中国における出版ビジネス発展の大きな要因は、およそ20年前からはじまった政治状況の変化や改革開放による書物の規制緩和で、自由を得た出版社が広範囲のジャンルの本を出版しはじめ、読者人口の増加につながったとされています。90年代の中ごろからは本当の意味での出版商業化が始まり、現在もその途上にあります。
  自由市場経済が発展するなか、中国の出版人は出版ビジネスによる収益の可能性に目をつけ、同時に紙の価格が高騰することに乗じて出版物の価格も高騰したわけです。最近の中国の出版物は印刷技術やマーケティング技術の改善にも取り組んでおり、出版ビジネスは好調で読書人口も増加しているといわれています。
  ところで民国当時の中国はまだ書き言葉が古代漢語であり、白話文、つまり話しことばを主体とした現代漢語による文学の必要性が叫ばれていた頃でした。当時の中国文壇を担った人びとの多くは日本への留学生であり、そのなかでもとくに中国新文学運動の代表である魯迅をはじめ、 郭沫若、夏衍などは古い中国語だけでなく、 外国語から必要な言葉をどんどん取り入れる必要があると力説し、そのために圧倒的な読書量をこなしたといわれています。
 わが国では書道家すら本を読まなくなったと嘆く人が多くなりました。私、出版人として非常に情けなく思っていますが、書道を志す人が「きちんと本を読んで勉強する」、そんな業界になって欲しいと心から願っています。先生のお手本を引き写すだけでなく、文字の字源やその書体の特徴、書者の小伝、時代背景など、知識・教養が背景に見えるような、そんな作品を見せていただきたいものです。