敬天齋主人の知識と遊びの部屋

敬天齋主人の知って得する中国ネタ

【申年】VOL.2

 申は人間に最も近い動物であることから、中国四大奇書のひとつで孫悟空が活躍した「西遊記」を初め、「猿」は昔話やことわざにもたくさん登場するなど、古来より広く親しまれてきました。日本でも、「猿蟹合戦」「猿地蔵」「猿婿入り」などの昔話や伝説がたくさんあります。歌舞伎などの芝居で、千歳、翁に続いて狂言方が演じる「三番叟」は、序幕前の祝儀として行う申の舞ですが、その所作は稲の農作業から型をとり、豊年満作を祈るものと言われています。   実際の用例を見てみますと、たとえば「見ざる、言わざる、聞かざる」の三訓や「猿も揉み手(何事も下手に出るのが賢明のたとえ)」は、「サル」の文字をもとに処世術を説いた立派な教えですが、残念ながら「猿」を用いた故事・成語にはあまりいい意味のものはありません。
  道に長じた人でも失敗するたとえに「猿も木から落ちる」、浅はかな考えは「猿知恵」、外見ばかりで中身の伴わない人を「猿の烏帽子」、自分のことを省みず他人の欠点を指摘することを「猿の尻笑い」、自分より知恵者の偉大さが分からず嘲笑うことを「猿が佛を笑う」、忙しいフリをしていても実は何もやっていないことを「猿の空風」。
  いつものようにさらに脱線しますと、「猿猴取月」では、水に映った月をとろうとした猿がおぼれ死んだという故事から、身のほどをわきまえずに無理なことを
望むと災いをうけるのたとえといった具合です。
  ここまでいくとさすがに申年の人から猛抗議を受けそうですので末筆に一言。わが国では、哺乳類霊長目の猿のなかでもとくに野生のニホンザルが生息することから、人間のルーツや人間性の非常に進んだ研究を行っています。古来、インドやアフリカでは、猿が神格化され、またお隣中国でも神秘的存在として扱われていました。日本でも埴輪像の中に猿をモチーフにしたものもあり、ペットとしても非常に親しい存在です。
  申年生まれの方のご健勝、ご多幸をお祈りする次第です。 すみませ〜ん。