敬天齋主人の知識と遊びの部屋
推薦の言葉

 
書法漢学研究メルマガ
メールマガジン Vol.5 2008年6月30日発行
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

てるてる坊主梅雨入りしてから随分経ちますが、それにしても雨が降りません。たしか去年もそうだったような気がしますが、もう梅雨明けかなと思った途端、まとめて雨が降り続いたような記憶があります。自然現象だけに文句を言って行くトコもありませんし、困ったものです。

さて、最近すっかり見なくなりましたが、雨降りと言えば「てるてる坊主」だと思います。このてるてる坊主の原型は中国の掃晴娘人形です。大雨の主「東海龍王」に対し、妃になる条件をのみ、この世を去った晴娘を偲び、雨降りの日に切り紙を門にかけたのが始まりと言われています。この話は平安時代の日本に伝わりますが、女性の神様がいなかった日本では、「照法師」と命名され、江戸時代には現在の軒先から吊すスタイルが定着したようです。逆さまに吊すと「雨乞い」のおまじないになるという地方もあるようです。こう蒸し暑い日が続くと、「夜の間だけでもちょこっと降ってくれよ」などと、我が儘な希望を持ちたくもなりますネ。

「書法漢學研究」編集実務もいよいよ大詰めを迎えています。最終段階でもレイアウト微調整、訂正部分の確認作業、表紙回りの作成などを済ませばいよいよ入校となります。購読者のみなさま方、今少しお待ち下さいませ。

【本号の内容】
 「書法漢學研究」第3号の内容
 良書紹介 「可齋論印三集」
 烏魯木齊・トルファンと西域旅行−『西域文史』から−  大野修作


 「書法漢學研究」第3号の内容(7月末刊行予定)
【論 考】 萩信雄 「開通褒斜道刻石考釈」
  朱 剛 「呉湖帆の書学(三)」
  菅野智明 「恵兆壬『集帖目』考―中国国家図書館蔵本を中心に―」
  大野修作 「光明皇后『杜家立成』の原書者は誰か」
【研究ノート】  大形 徹 「符と書道−台湾、東港鎮の符−」
  池沢一郎 「与謝蕪村と『連珠詩格』」
  伊藤 滋 「碑法帖拾遺記」
【詩吟漢詩講座】 随時募集中です。
◆読者の皆様からの、自作漢詩の投稿をお待ち申し上げています。
※執筆者およびタイトルは変更される場合があります。    


 良書紹介
可齋論印三集   孫慰祖 『可齋論印三集』
B5判並製 本文頁 二色刷
ISBN978_7_5326V2376_1
流通価格4,800円を→
本誌読者特別価格3,000円
(税込)
残部3部先着順 

以前、メールでご案内したコトがあるので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。上海博物館副研究員の孫尉祖先生が上梓した『可齋論印三集』をご紹介いたします。

以前出版された「論印集1,2」、そして今回の「論印集3」の出版となりました。小社刊「中国古璽印精選」刊行の折には序文も書いていただいており、中国書を取り扱う友人に依頼し、数冊購入しました。

中国語の解説の部分は皆さんお分かりになりにくいかと思いますが、図版がとても豊富ですので、資料としてパラパラッと見るだけでもそれなりに理解が深まるかと思われます。

友人からある程度まとめて購入しましたが、まだ在庫3冊残っております。以下、大野先生にこの本を奨めるポイントを列記しましたのでご紹介します。

推 薦 文  文責:「書法漢學研究」編集代表 大野修作

孫慰祖氏は現代中国の篆刻家で、深く印章の研究をしている人の三本の指に入る人で、恐らく若手では第一人者と言えるであろう。上海博物館研究員、西冷印社の理事でもある。その孫氏が『可齋論印三集』(上海辞書出版社)の大著を出版された。

これまでにも『古封泥集成』『中国篆刻全集・漢代巻』『唐宋元私印押記集存』『孫慰祖論印文稿』『可齋論印新稿』などの書を出版されていて、その学識の該博さは証明済みであるが、本論集には日本滞在の成果である日本の早期文書の官印や藤井有隣館蔵印にも論究されていて、日本の印章が、中国人の手によって客観的な評価を与えられているなどが新鮮な点である。 

また陳鴻壽に関する研究が4本も入っていたり、陳介hの『十鐘山房印挙』や『封泥考略』に関する論究は、封泥研究通史と言った内容の濃いものに仕上がっている。是非日本の読者に見てもらいたい本である。



 烏魯木齊・トルファンと西域旅行−『西域文史』から−  大野修作

私が14年前に在外研究で、北京の歴史博物館で研修をしていた折、外国人用の宿舎が無いと言うことで、北京師範大の専科楼を宿舎にしていました。此は小生を招聘して下さった歴博の史樹青先生が輔仁大学の出身であり、輔仁大学は後に師範大と女子師範をあわせて北京師範大となったことによるもので、史先生の推薦で入ることが出来ました。史先生の輔仁大学時代の先生は、陳垣先生や啓功先生でした。

そのころ私は啓功先生の『論書絶句一百首』を翻訳して『詩でたどる書の流れ』という本を二玄社から出版しており、更に『書の宇宙』というシリーズの中国書道史を毎月一冊書いておりましたので、月に一度は啓功先生に会うことが出来るという幸運に恵まれておりました。当時の啓功先生といえば、中国を代表する書家であり、愛新覚羅の姓が示すように、清朝の皇族で、普通の人が会おうと思っても、なかなか会見できるものではありませんでしたので、中国人からも何と幸運なのだと羨ましがられました。

朱玉麒と大野氏
朱玉麒氏と大野氏

さらに中国語の先生(輔導といいました)を付けて欲しいと史先生に言うと、啓功先生を介して、啓功先生のゼミ生の朱玉麒という博士後期課程の学生を紹介してくれました。其の朱君から最近『西域文史』という学術雑誌が送られてきました。見ると彼がその学術雑誌の主編です。何と偉くなったものであると感心してしまいました。

私の中国語の輔導であったときは、新疆師範大の講師で、かつ北京師範大の博士後期の院生という身分(中国の大学院の博士後期流動站)でした。輔導というのは家庭教師みたいなもので、時給で払うというものでしたが、毎週末はたいてい一緒に酒を飲み、中国語で好きなことを言い合うと言うことで、時間を忘れて激論したこともありました。

したがって中国人のものの見方や、発想の根幹に関わる部分は、朱君から得たと言える部分が多いのも事実です。書画骨董は史樹生先生から勉強しましたが、ほとんど北京の有名なオークションの下見に行ったときに、実際の書画を見ながらの最高の鑑定、解説ですので、大いに勉強になりました。望みうる限り最高の環境にいた一年と言えます。

その朱君が夏休みになったら、家族のいる新疆の烏魯木齊に帰省するというので、私も一緒に行きたいと言って、夏の盛りに新疆維吾爾自治區の旅行にでました。もちろん列車の旅ですので、北京を出発して烏魯木齊に着くまでの72時間、三日三晩の旅でした。二等寝台ですので、三段ベッドの列車で、食事も北京で買い込んだ即席麺とお菓子がほとんどで、たまに駅弁の買えるところで、駅弁も買いました。

毎朝夕、車掌がポットのお湯を交換に来ますが、普通なら飽きてしまいそうな旅ですが、日本人が二等列車にのっていることは珍しいということで、次から次と来客が来て、全く飽きることがありませんでした。蘭州を過ぎると車窓から見えるのは砂漠ですので、日本とはまったく異なる景色の中で、様々な疑問を中国人にぶつけていたような気がします。

新疆師範大での講演
新疆師範大での講演

朱君の家族(当時彼は結婚していて奥さんと子供一人ありました)に挨拶した後は、師範大の宿舎に泊まりながら、朱君が建ててくれた計画に沿って、新疆師範大での講演、歓迎夕食会、更に南山牧場でのバーべキュー大会(私のために羊一頭を使いましたし、馬にも乗せてもらいました)、トルファン、ベゼクリク千仏洞、高昌古城、アスターナ古墳、葡萄溝、天池遊覧など、盛りだくさんの行事をこなしました。しかし朱君のもてなしと、私自身も初めての西域旅行ですので、疲れも知らず、本当に楽しい旅をさせていただきました。

高昌古城
高昌古城

その朱君から、もしまた烏魯木齊に来るなら歓待するので是非来てくれと、手紙を添えて、『西域文史』が送られてきました。西域研究も、書論でも西川寧の時代はとっくに終わっていて、中国での研究は進んでいて、日本は水をあけられたという感が強くします。今年の秋、旅行団を組むことが出来れば、もう一度、西域を訪ねてみたいと思っています。

大野氏
大野氏

朱君も偉くなって、今は師範大の教授であるばかりでなく、西域研究センター長であり、かつ華東師範大の兼職教授でもあり、上海でも年に一ヶ月以上講義に出張しています。恐らく忙しくて、限られた時間しか応対してもらえませんかも知れませんが、最新の最高の研究情況知ることが出来る機会ではないかと思います。

 


書法漢学研究 メールマガジン Vol.5  2008年6月30日発行
【 編集・発行 】アートライフ社 http://www.artlife-sha.co.jp
540-0035 大阪市中央区釣鐘町1-6-6 大手前ヒルズ209
  Tel:06-6920-3480 Fax:06-6920-3481
差出人: 敬天齋主人こと近藤 茂   
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
■ご意見・ご感想・メルマガで取り上げて欲しい情報など、ぜひお寄せください。
バックナンバーはこちらでご覧いただけます。
■配信停止・配信先アドレス変更は、info@artlife-sha.co.jpへお知らせください。

Copyright (c) 2008 Artlife-sha. All Rights Reserved.


【書法漢學研究】 【トピックス】 【バックナンバー】 【推薦の辞】 【メールマガジン】 【ご購読お申込】