曽て、書は漢学の基底を成すものであり、書・学は一体であった。かつ、ここにいう漢学とは、殆ど学全般を指すものでもあった。学に根ざさぬ書はありえず、書を度外視して、そもそも学は成り立たなかった。学者は常に書家であった。
今日、書道人口は多いが、根底に漢学を持つ人は稀である。この両者の共生を目指す雑誌発刊の挙を聞き、これぞ現代の頂門の一針であろう、書人の競って購読されることを希う次第である。
中国の傳統的学藝の世界において、書と學は長らく表裏一體の存在であった。それが近代の新たな学藝觀により、両者は次第に乖離し、書は「造形藝術」、學は「科學」の道を別々に歩むこととなり、今や學を治める者は書法を知らず、書を習う者は文義に疎く、その弊害は極まったと言ってよい。「書法漢學研究」はこの弊害を救い、書と學をあるべき本來の姿に帰すために創刊されたと信じる。同誌今後の健闘を刮目して待つ。
書文化の神髄をきわめる雑誌『書法漢學研究』が刊行されると聞く。生涯学習のかけ声のもとにお手軽な「お稽古」がはやる時世に、快挙というべきである。同誌が斯学の興隆に大きく寄与することをこころから希望する。