◆一月末に『書法漢學研究』第六号が発刊されました。定期的に内容の濃い雑誌を出してゆくことは楽ではありませんが、皆様の後押しがあればこそと思っております。
書譜社の北京本社にて筆者
◆内容の充実を考えれば、日本国内だけでなく、中国、朝鮮など漢字文化圏の外国の事情も知っている必要を感じて、昨年末、北京に行ってきました。主たる目的は書譜社の本社北京移転の開幕式に参列要請があったことと、併せて行われた「漢字書法大会」という学会で日本の近代書道事情を報告するというものでした。
◆何しろ最近の中国のオークションでの書画の値段はバブルそのものと言っても善いもので、張瑞図の「行書般若心経」が一億四千万の値がついたことや、八大山人の「★倪山水」が史上最高値と言われる十一億円で落札されると言うことがありました。それら高値のつく物の多くが日本に在るもので、数十年か数百年前に日本に舶載されてきた本物で、それら確実な本物が中国では品薄になってしまい、日本にバイヤーが来て買いあさっていると言うことは一部の人には知られています。
学術検討会の模様
◆もう一つバブルを招いているのは、経済成長が著しい割には、書画の学問が脆弱になり、有名な書画と評判を取ると、それに飛びつくと言うことがあります。もっと視点を広げて書画の文化の底辺を上げなければと言う動きも一方で出つつあるようです。私が今回、北京で報告したのはそのような要請に対してです。現代の中国人は日本の近代の書壇の流れなどほとんど知りません。もちろん毎日系や読売書法系の違いも知りませんし、朝日の二十人展のメンバーの名前もほとんど知られていません。まして謙愼書道会や日本書芸院などのことは知りませんので、明治以後の楊守系来日以後、日下部鳴鶴以来の書道史の流れをごく大雑把に述べてきました。
学術検討会での筆者
◆それも少し無理をして、一時間半、すべて中国語で発表しました。すると大変な反響で真剣に聞いてもらえました(恐らくネットで配信されているかと思います。新聞社の人が取材に来てましたので)。また小生が主幹する『書法漢學研究』にたいしても、これほどの学術雑誌が日本で発行されているのかという驚嘆をもって迎えられました。
◆これからは『書法漢學研究』は漢字文化圏での学識有る雑誌として、世界に発信してゆかなければと確信のようなものを持ちました。
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