メールマガジン Vol.15 2013年8月1日発行
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暦の上では「大暑」で連日猛暑が続いておりますが、あと数日で「立秋」となり、秋の始まりとなります。みなさん、夏バテなど体調を崩してはおられませんか。
「書法漢學研究メールマガジン」をお届けいたします。
先日、本誌顧問をしていただいている東京大学名誉教授・松丸道雄先生に第13号刊行報告と、次号以降の打ち合わせなどをさせていただき、そのままの流れで恒例になっている食事会を楽しませていただきました。
以前、お話しいただいた台北・故宮博物院に学術研究を目的とした訪台のお話、毛公鼎真偽説についてのご見解など、非常に有意義なお話を拝聴しました。次号、もし先生の気が変わらなければ、是非、このお話を掘り下げてご紹介していただきたいと思います。
【本号の内容】 |
「書法漢學研究」第13号のご案内 |
「書法漢學研究」第13号刊行にあたって−大野修作 |
漢詩講座再開のお知らせ |
新刊案内 『于右任草書般若心経』 |
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「書法漢學研究」第13号のご案内 |
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【論考】 |
副島種臣と斉玉渓(上) ―明治一〇年、上海にて― |
島 善高 |
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明清印学の東?伝播 ―江戸時代、高芙蓉一門の印学研究― |
李 中華 |
【研究ノート】 |
光悦筆和歌巻の和歌選定における一基準 |
根本 智 |
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古賀穀堂『東征日載』 ―弟の古賀?庵との対比で― |
大野修作 |
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井野勿斎(好問)撰并書『字源論』について ―日本の江戸時代の小学資料として― |
中島磐根 |
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小野鐘山 硯石講演の記録(中) |
菅野裕子 |
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「木村蒹葭堂邸跡」石碑(後編) |
花田尊文 |
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「書法漢學研究」第13号刊行にあたって −大野修作− |
『書法漢学研究13号』が刊行されました。本号は内容的に日本の書道史に関する文章が多くなりました。これは偶然と言うより、現代という時代を反映しているかもしれません。最近、中国大陸から出る本や論文集が、題名に惹かれて購入してみると、焼き直しものが多く、失望させられることがしばしばでした。また豪華な全集物では、資料調査にお金をかけた編集であることはわかるのですが、その割には地道な考察が足りなかったりして、どこか物足りない思いをすることがありました。
これはおそらくオークションをはじめとする書画の商業活動が活発化するに反比例して、地道にこつこつと研究することが評価されなくなってきていることと相関するかと思われます。
その一方、日本の江戸時代を中心とする漢学研究が次第に掘り下げられて深化しています。日本だけでなく台湾でも研究成果が上がってきていることもあり(これは多分に政治的な選択で日本漢学を研究することは結果的に保身にもなります)、しばらくは日本の漢学研究の成果が多くなるかもしれません。
本号で古賀穀堂の漢文日記や、井野忽齋の字源論などは、日本で最初の紹介でしょう。高芙蓉の印学研究も中国人による一段と深い研究です。副島蒼海の中国旅行中の斉玉渓との漢詩を通しての交際は始めて明かされるものです。
次号からは漢詩欄も復活しますことも併せて味読に堪える雑誌にしてゆきたいと思います。
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漢詩講座再開のお知らせ |
しばらく予告も無しに漢詩講座を休止していましたが、次号14号から再開したいと思います。
この二年間、近畿漢詩連盟の設立に関わり、小生が会長職を拝命するに至り、本講座との兼ね合いをどうするか試行錯誤していましたが、本誌読者のためには、やはり漢詩講座があるべきだとの結論に至りました。モチベーションを高めるためにも、すぐれた作品は掲載して顕彰し、表彰するという方針でゆきたいと思い、スポンサーも確保しつつあります。ふるってのご応募お願い申し上げます。
題目は編集部から出題したいと思います。次号では中山教授のノーベル賞受賞がありましたので、
「ノーベル賞、長寿、生活」
を題目としたいと思います。七言絶句の形式で、ご応募下さい。編集部で審査します。(大野) |
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新刊案内 『于右任草書般若心経』 |
釈文・訓読・解説・略年譜:大野修作
◆最近、尖閣列島問題をはじめとして、日中の関係が難しくなっています。これは国力の消長とも関係するのでそう簡単には解決しないでしょう。書道においても、日・中・台湾の関係は微妙に変化してきました。「書聖」は王羲之であるとの認識は一致していましたが、「現代の書聖」は誰かとなると、実に難しい問題でありました。
ことに「于右任」は中国大陸と台湾の関係が直結しましたので、それはとりもなおさず于右任が蒋介石の右腕であり、政治的にも大きな存在であったと言うことですが、大問題で今日まで正当な評価が為されませんでした。「書聖」はなんと言っても伝統や国家を背負う存在です。于右任は監察院院長として文化行政の頂点に立った人で、しかも『標準草書』という教育書道の基本を定めた人でもあるので、その資格はあり、もっと評価されるべきと思います。
その于右任(1879〜1964)ですが、台湾に逃れ、一時は中国大陸側からは国賊とされていましたが、最近の政治情勢を背景に、正当に評価されるようになりました。そしてついに最近では張大千が「画聖」であるように、于右任は「書聖」とまで高く評価されるようになりました。もう台湾と中国大陸の対立は殆ど過去のものになっているようです。
于右任は草書の研究にもっとも力を尽くしましたが、草書を研究しだすのは1931年12月、上海で同志と“草書社 (翌年、標準草書社と改名) ”を設立したときに始まります。草書社の目的は、歴代の煩雑複雑な草書に対して、標準化の研究と整理を推し進め、草書を学ぶ者のために一つのすばやく簡便な法則を提供することでした。
人民共和国になって、周恩来が「文字改革」を提唱し、現在の中国大陸の簡体字になりますが、その原型は于右任の標準草書であったとも言われています。彼が編集した『標準草書千字文』の編集過程だけからも、全身全霊の作であったことが看取できますが、『草書般若心経』はその簡略版の意味合いもあり、草書の修得にたいへん便利です。
【仕様体裁】 A4判並製 図版原寸・解説オールカラー
定価:1,260円(税込) ISBN:978-4-9906254-5-0 C3070 \1200E |
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書法漢學研究 メールマガジン Vol.15 2013年8月1日発行
【 編集・発行 】アートライフ社 http://www.artlife-sha.co.jp
540-0035 大阪市中央区釣鐘町1-6-6 大手前ヒルズ209
Tel:06-6920-3480 Fax:06-6920-3481
差出人: 敬天齋主人こと近藤 茂
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