敬天齋主人の知識と遊びの部屋
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書法漢学研究メルマガ
メールマガジン Vol.17 2014年9月19日発行
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 「書法漢學研究」読者のみなさま、大変、遅くなりました。書法漢學研究メールマガジン17号をお送りします。
今号は小生の作業が遅れ発行が遅れましたことをまずはお詫び申し上げます。
 この間、ナイジェリア及びコンゴ民主共和国を発生国とした、西アフリカで猛威を振るうエボラ出血熱の発生、国内では広島の土砂災害、デング熱騒動、そして地方議会議員の政務活動費不正使用事件と、腹立たしく残念なニュースばかりが続いています。
 季節も秋の気配が感じられるようになりました。スカッとした秋晴のように、清々しい日々を過ごしたいものです。

【本号の内容】
 「書法漢學研究」第15号のご案内
 「敬天齋主人の雑言 −近藤 茂−
 「書法漢學研究」第15号刊行にあたって −大野修作−
 新刊紹介 「比較して学ぶ 王羲之と董其昌」 - 董其昌臨淳化閣帖 王羲之巻 -

 「書法漢學研究」第15号のご案内
書法漢學研究第15号  
【論考】 清華大学蔵戦国竹簡『保訓』の書法 福田哲之
  嶽麓書院秦簡をめぐって
― 赤外線スキャンと『占夢書』 ― 
大西克也
  周亮工の『読画録』と『印人伝』について 西上 勝
【研究ノート】 「奇士」福本雅一先生傳
― その研究姿勢と著作大要 ―(上)
大野修作
  清華簡『筮法』について 末永高康
  「五代友厚製藍所・西朝陽館跡」石碑 花田尊文
【詩吟漢詩講座】    
 
 敬天齋主人の雑言 −近藤 茂−
趙之? 刻字対聯
趙之? 刻字対聯

先日、日頃からお世話になっている先生から、刻字対聯を頂戴しました。楹聯は名所旧跡、園亭、寺廟、などでも見られますが、主に室内用として楹柱や壁面に懸けられるものです。木版や木材、竹などに、碑や帖から集字した「集碑帖聯」、古典詩などから集字した「集句聯」などがあります。
早速、大野修作先生に画像を送付し、その内容についてご教示いただきました。

筆者、趙之?(1781年〜1852年)は浙江 銭塘;生まれ。字は次閑・献父、号は献甫・宝月山人、室号は補羅迦室。;清朝中期の書画、篆刻家で、西?後四家に数えられる。 陳豫鐘の高弟として金石学、篆刻に通じる。書は各体に優れ、画は山水画・花卉画を得意とした。篆刻の刀法は陳鴻寿学び、特に玉の國法において名を残した。

【釈文・口語訳】
 半潭秋水一房山   湖の半ばまで水位が下がった所から見える秋の山
 幾?梅花数竿草   何本かの梅花に数本の草

趙之?
趙之?

この対聯、出典がバラバラだそうで、前聯の上四句は、全唐詩・巻24「山房喜友人見寄」にある一節で、後聯の上四句は、元詩選・二集13巻「寄周子羽」の一節だそうです。 大野先生によると、筆者の趙之?くらいになると、対聯の題材であっても、自分の言葉のようにみせながら、古い出典を絶えず捜していたことが窺えるとのことでした。

古い木額だったので、その先生は「緑青(銅が酸化して生成される青緑色の錆)に胡粉(顔料の一種)を混ぜて着色」したそうで、拙宅において大切に保管して飾りたいと喜んでいます。


 
 「書法漢學研究」第15号刊行にあたって −大野修作−

『書法漢学研究』15号をお届けします。今号は古代文字学に関する論考が三本揃って、創刊以来、約八年にして特集号のような体裁を取ることが出来ました。周知のように、二十世紀に入り、簡牘の出土は夥しく、1901年のスタインのニヤ遺蹟、ヘディンの楼蘭の探検に伴う敦煌漢簡、居延漢簡の発見など主にヨーロッパ探検隊による発見でしたが、20世紀後半に70年代に入ると、72年の山東省銀雀山漢簡の発見、73年の湖南省馬王堆帛書の発見、75年の雲夢秦簡の発見などが相継ぎます。しかし古代思想史研究の上で特に重要な意味を持つのは、湖北省荊門郭店から発見された郭店楚簡と、1994年に上海博物館が香港の骨董市場から購入した上海楚簡であり、この両者については現在数多くの研究が生み出されています。2000年代に入ると岳麓書院蔵秦簡、北京大学蔵西漢楚竹書、清華大学蔵戦国竹簡など陸続と発見され、出土資料集が刊行されています。現在日本の書学は、全くそれに追いついていない情況で、何とかしなければと言う思いでありましたが、今回岳麓書院秦簡については東大の大西先生が、清華簡については島根大の福田先生と、広島大の末長先生が、一つの見通しを示して下さいました。最先端の研究ですので味読して下さい。

山形大の西上先生には、周亮工の『読畫録』と『印人伝』で執筆して頂きました。周亮工という人はおもしろい人ですが、容易に手の出せる相手ではありませんでした。単なる手すさびに過ぎないと思われてきた篆刻を業とする人の生涯など、無視されて然るべき人を相手に伝記を誌す周亮工の視点の高さを描き出しています。それは日本最初の印人の伝記集成といってよい『訳注 論印絶句』(アートライフ社刊)を書き上げた福本先生の視点に通じます。

福本雅一先生は書学を深く究めた人はその名を知っていますが、ほとんど日本の書家は訳の分からぬことを研究している人である程度の理解しかありませんでした。それがどれだけ間違っているかを伝記を通して論述したのが、大野修作「奇士・福本先生伝」です。中国の学問は、要するに中華四千年の歴史を背負っているであり、そうたやすくその全体を理解できる者ではありません。古来、それに挑戦し、優れた業績を上げた人はいます。狩野君山、吉川幸次郎、宮崎市定、小川環樹などの業績は、四千年の歴史の重みに負けないと言えますが、福本先生の業績も全く同様の高いレベルで、しかも書学と言った前人未踏の広い世界で上げた業績だけに広く顕彰されるべきであると思われます。受業生の一人として全部ではないものの、一部はたどれたのではないかと思っています。

 
 新刊紹介
  「比較して学ぶ 王羲之と董其昌」 - 董其昌臨淳化閣帖 王羲之巻 -
比較して学ぶ 王羲之と董其昌
詳細・ご購入

日向雅之 編

◆淳化閣帖は、北宋の淳化三年、宋の太宗(九三九―九九七)が、翰林侍書の王著に命じて内府所蔵の名跡を編次させたもので歴代法帖名蹟集全10巻、古人の書法を伝え習うための中国最古の大型叢帖です。宋時代に原版は毀たれたため、初拓本はきわめて少なく、そのため清代に多くの翻刻本や校訂本が作られました。
◆淳化閣帖全10巻のうち、巻六、七、八が王羲之の書で、本書は現在、北京故宮博物院に収蔵されている董其昌が臨書した「淳化閣帖 王羲之巻」原帖の研究に取り組んだものです。王羲之の造形美、美意識を汲み取りながら臨書したその字形は形臨ではなく、毎日書道会会員で創玄書道会審査会員である著者は、この両者の造形理論を解明し、創作に役立てようしています。
◆創作する側の立場から「淳化閣帖 王羲之巻」を董其昌がどのような臨書感を持ち、創作へ結びつけたか、その理論や考えを通して多くの書作家の一助になり得る、意義ある試みであると言えるでしょう。

 

【仕様体裁】 並製 本文 総220頁モノクロ
定価:本体3,000円+税 ISBN978-4-908077-00-5 C3070



書法漢學研究 メールマガジン Vol.17  2014年9月19日発行
【 編集・発行 】アートライフ社 http://www.artlife-sha.co.jp
540-0035 大阪市中央区釣鐘町1-6-6 大手前ヒルズ209
  Tel:06-6920-3480 Fax:06-6920-3481
差出人: 敬天齋主人こと近藤 茂   
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