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メールマガジン Vol.21 2017年7月27日発行


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向日葵 暦の上では秋となりましたが、毎日暑い日が続いております。みなさま、夏バテなどされず、お元気にお過ごしでしょうか。
 前号は19/20号合併号として平素の倍の量の原稿を掲載しましたが、今号より通常のスタイルに戻るので作業量的にも負担が軽いと思っていましたが、意に介さず、今回も時間に追われる編集作業となりました。


【本号の内容】
 「書法漢學研究」第21号のご案内
 「書法漢学研究」第21号発行にあたって −大野修作−
 第二回 兎園会展のご案内

 「書法漢學研究」第21号のご案内
書法漢學研究第21号  
【論考】
一山一寧禪師の書法藝術 衣川賢次
北山堂コレクションについて 富田 淳
【論説・資料紹介】
郭沫若の書、所謂「郭体」の規定と成立過程及びその時期を巡って 松宮貴之
沈遼と北宋書壇(二) 陳志平著
菅野裕子(訳)
長尾雨山漢詩補遺集(三) 大野修作
長堀特集 番外編(中編) 花田尊文
 
 
 「書法漢学研究」第21号発行にあたって −大野修作−
21号

書法漢学研究・メルマガ21号をお届けします。19号・20号が合併号でしたので、21号が定期刊行にもどれてほっとしています。今号は大きく二本の論考・紹介を載せることが出来ました。

衣川氏の「一山一寧」に関する論は学術的に深い内容を持っています。一山一寧は日本に来朝し、元の国書を鎌倉に奉呈しましたが、伊豆の修善寺に幽閉させられたりしました。 しかしやがて疑惑が解け、彼の学問の高さ、禅理解の深さが広く知られるようになると、建長寺に住持し、ついに後宇多上皇に召見せられ、南禅寺に住し、公家以下みなその道光を仰ぎました。虎関師錬、夢窓疎石らがその派下であることから知られるように、日本の五山文学の興隆に大きく貢献しました。書では「雪夜の詩」や「固山一鞏に与える法語」などにみられる漢字の格調の高さは、なかなか説明しにくいものでありました。いや「説明する」という姿勢そのものが問われる修行の高さがあるわけで、一山一寧は日本書史の中でも、開拓者でもあり、その位置づけに困る存在でありました。本稿はその修行の高さに、正確な語録の注釈という形で肉薄しようとしている意志が感じられます。

富田氏の「利榮森」に関する論考は、収蔵家・鑑定家である香港の利榮森をとりあげて、一昨年、香港中文大学で開催された「北山汲古・中国書法展」「北山汲古・碑帖銘刻拓本展」の意義を説明してくれています。利榮森氏はジャーディン・マデソン商会を引き継ぐような形で事業を拡大させ、書画文物の収蔵鑑定にも意を注ぎました。その行為と業績は、ちょうど清朝中期に広東の収蔵家を引き継いで拡大させたような形と言えます。清朝時代、西洋貿易を独占していた広東の経済力はすごいもので、幾多の富家が輩出しましたが、此の経済力を背景に書画鑑賞の機運がさかんになったことは注目に値する事実です。広東の賞鑑家の筆頭にあげるべきは呉栄光です。蒐蔵品は「?清館」を築いてこれを収蔵しましたが、道光十年(1830)、恐らく湖南府政使在任中に、所蔵の古拓、真蹟を模勒上石して『?清館法帖』六冊を造りました。また『辛丑銷夏記』5巻は、呉栄光が四十三年間にわたる官場生活中に獲得した書画と偶目の機会のあった書画を録載してそれに解説を加えたものですが、辛丑はアヘン戦争の最中の道光二十一年にあたり、孫承澤の『庚子銷夏記』につづけるという意味で辛丑と名図けたと言われます。その考証の正確、博大なることは、庚子銷夏記、江邨銷夏記に比して一段と優れると言われます。広東の賞鑑家では、呉栄光と同時代では葉夢龍がおり、潘正?がこれに続き、更に孔広縺A伍元宦A孔広陶らがでたことは知られていますが、富田氏の利榮森の紹介記事は、もちろん香港中心に論じられており、現代の東南アジア史、中国史、そして書画鑑賞史そのものといえます。

松宮氏の「郭沫若」の書風についての考察は、北京の「故宮博物院」の題辞、また私が研修していた頃の「歴史博物館」(現在の国家博物館)の表札などから知られるように、現代中国を代表するような有名な文人書家ですが、その郭沫若というあまりによく知られた存在だけにあまり注意が行き届かなかった書に対して、変化と定立を考察した新しい試みと言えるでしょう。

また長尾雨山の漢詩集の連載、?庭堅と沈遼の交遊研究の翻訳、さらに花田さんの訪碑漫歩の連載など読み応えのある物も揃っています。


 
 第二回 兎園会展のご案内
兎園会の大扇子
兎園会の大扇子

書法漢學研究会理事長・大野修作先生が出品する展覧会が開催されますのでご紹介します。

今から6年前、昭和26年生まれの井谷五雲(篆刻・書道)、大野修作(漢詩・漢字)、奥 宣憲(かな)、北野摂山(漢字・現代詩文書)、松原 清(絵画)の五氏は還暦を迎えたのですが、ある時、酒席で還暦を機に記念展は出来ないものかという話になり、2011年12月9日〜11日の三日間、「還展 還暦からの模索」展を兵庫県県民会館で開催しました。互いに利害関係のない、サロン的感覚で芸術家としての“心の叫び”とも言うべき画期的で有意義な展覧会でした。

この度、メンバー各位から二度目の展覧会を「企画内容に賛同する仲間を増やして行いたい」という申し出があり、新たに5名の参加を得、それとともに展覧会名を「兎園会」と改称しました。そしてメンバーから「驥山館で展覧会を行いたい」という申し出を、驥山館館長・川村龍洲氏の快諾を得て実現する運びとなりました。また、川村龍洲氏と大野氏の同学生で元警視総監・池田克彦氏の賛助出品もお願いしております。

【出品者】(50音順)
  安藤豊邨(日本刻字協会理事長)
  井谷五雲(日本篆刻家協会理事長)
  稲村龍谷(公益社団法人創玄書道会理事)
  大野修作(近畿漢詩連盟会長)
  奥 宣憲(公益社団法人日本書芸院審査会員)
  北野攝山(太源書道会理事長)
  下谷洋子(公財書道芸術院常務理事)
  深瀬裕之(日本書芸院理事)
  福島松韻(由源社 常任委員総務)
  松原 清(全日本美術新聞社代表)

−第二回 兎園会展−
 2017年8月1日(火)〜8月13日(日)
 一般財団法人驥山館
  〒388-8007 長野市篠ノ井布施高田380
  Tel:026-292-0941  Fax:026-292-1954   

 


書法漢學研究 メールマガジン Vol.21  2017年7月27日発行
【 編集・発行 】アートライフ社 http://www.artlife-sha.co.jp
540-0035 大阪市中央区釣鐘町1-6-6 大手前ヒルズ209
  Tel:06-6920-3480 Fax:06-6920-3481
差出人: 敬天齋主人こと近藤 茂   
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