◆7月19日、日展会友で日本篆刻家協会常任顧問の井谷五雲氏が主宰する娯ツ文會研究会に於いて、本会理事で安田女子大学栄誉教授の萩信雄氏による講演会を企画しました。1時間少々の限られた時間でしたが、秦漢古銅印譜と明清原ツ印譜の分類、古銅印譜の種類、主要収蔵博物館の紹介、そして真贋についての具体例なども解説されました。とくに真贋については資料のために持参された贋物の銅印を図録を示され、有名な博物館が刊行する図録にも贋物が掲載されていると指摘されました。
◆また、中国の印章は戦国時代の古★(金+尓)に始まり、はじめは官・私印とも古★としていましたが、秦代になってから皇帝の印のみ璽と称し、その他の官印や私印は印、将軍の印は章としました。漢代になると、皇帝を頂点とする国の制度として整備され、サイズ、鈕形、印文など厳格に定められ、魏・呉・蜀の三国時代以降も漢の印章制度は受け継がれました。よって、本物の古銅印を見ればある程度の断代測定は可能であるとしますが、五胡十六国時代のような目まぐるしく国が変わった時代にまで断代測定を行うのは流石に困難であると断定されました。そして多見による鑑賞眼、鑑定力の重要性について、鈕形、印文などを例に分かりやすく解説されました。
◆講演後には持参された古銅印、石印材、印譜、希少書籍などの資料を実際に手に取って見てもらえる時間も設け、聴講者のみなさんも目を輝かせてご覧になっていました。
【講師著書紹介】
本書は2016年に刊行され、「墨」240号で大橋修一氏、福田哲之氏が詳しく書評を述べています。刊行当時から棋界待望の書論として知られましたが、氏が過去に発表した論文26編、漢碑、北碑、蘭亭、法帖、清朝金石学まで多岐にわたる内容で、全400ページという膨大な量に収められています。氏の過去の論文を見るに、常に無駄のない簡潔な表現を心掛け、幅広い学識と精密な論証は、正に清朝考証学を踏まえた学問的姿勢が窺えます。
萩信雄著 「金石書史研究」
萩信雄論集刊行会
定価:18,000円(税別)、送料サービス
2016年3月刊
ISBN:9784907823771
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